天才
- 2009/04/02 15:38
- カテゴリー:子どもの生活の中から
画像:仲間と楽しく遊ぶ子ども達(昨年度卒園児達)
昔々、私(事務)が白梅幼稚園に就職する前の、事務のFさんから聞いたお話です。
当時は子どもの数が多くて、年中と年長組2クラスずつで160名を超えていました(年少組はありませんでした)。
その中にA君という漢字の大好きな男の子がいたそうです。
ある日、担任の先生が「すごいんですよ、A君はどんな難しい漢字も読めるんです!」と、事務のFさんは言われ「どれどれ…本当かな?」と、職員室にやって来たA君に消防用放送機器に書いてあった『交流電源』を指差して聞いてみました。
A君は「こうりゅうでんげん!」と自慢げです。
そこでFさんは紙に『啄木』と書いて見せました。A君は「ぶたき!」 それを聞いたFさんは「これはすごい!本物だ!」と納得したのでした。Fさん曰く『啄』を『豚』と間違えるほど漢字を知っていると思ったとか…(笑)
A君のお母さんの話では、A君は自分から新聞の活字に興味を持ち、家族に聞いて覚えたそうです。
Fさんも担任も「この子は大きくなったら博士になる天才かもしれない」と思ったそうです。
……それから何年か経ち、担任はA君のお母さんと道路でバッタリ会いました。
担任は「A君は、学校ではさぞかし国語が得意なのでしょうね」と聞いてみました。
すると意外にも「それが…、小学校に入ったら国語の勉強が簡単すぎてつまらないと嫌いになってしまったのです。中学いっても結局は興味が持てず、ひどい成績で、幼稚園時代に覚えた多くの漢字もすっかり忘れ、ただの国語嫌いの子になってしまいました。」との返事だったそうです。
お母さんがそれに付け加えたことは「幼児期に漢字を何でも読む我が子がほめられると嬉しくて、聞かれるままにどんどん教えていきましたが、よく考えると、退屈だったから大人に聞いてきたんですよね。そんなことよりも、子どもの中で遊び、もまれて人と関わっていく方法を覚えていった方がよかったのかもしれません。」とのことでした。
しかし、それ以後誰もA君やお母さんに会っていないのでA君がどんな大人になったのか知りません。もしかしたら高校生では国語が好きになり…博士になったかもしれません。
他人は一部分を見て、その人を評価する傾向にありますが、一生を見てみないとその人の人生が良かったのか悪かったのかわかりませんよね。
でも、幼少期に『早期教育』とか言って『お勉強』の詰め込みをすることより、多くの人に出会い、仲間を作る方法や自分の好きなものをみつけることの方が、人生の財産だと白梅幼稚園の先生達はよく話しています。